ダックスフンドに多いとされる椎間板ヘルニア。実際に手術を経験すると「歩けるようになるのか?」「以前の生活に戻れるのか?」と、不安が押し寄せてきます。
私の愛犬“クゥ”(7歳)は、突然の発症から緊急入院、そして手術を経て退院しました。待ちに待った帰宅の日、病院のケージから出て私の腕の中に戻ってきた瞬間、胸がいっぱいになったのを覚えています。安心したように大きなため息をつき、私の膝にそっと頭を乗せた姿が印象的でした。
この記事では、実際にミニチュアダックスを飼う私が経験した術後の生活とリハビリの方法を、体験談を交えながらまとめていきます。
術後すぐに注意したい生活習慣
退院した日のクゥは、入院前と比べて少し体重が落ち、毛並みにも元気がありませんでした。慣れない病院生活で精神的にも疲れていたようです。
家に帰り、自分のベッドに横たわると、私の顔を見ながら小さく「クゥ」と声を出しました。その瞬間「やっぱり家が一番なんだね」と実感しました。
担当の先生からは伝えられた注意点は次の通りです。
- 一日10分ほどの軽いリハビリ
- 足裏を刺激して感覚と血流を促す
- ジャンプや段差の使用は禁止
- 抜糸後は専用のコルセットを装着
当初は「少しぐらいなら…」と気持ちが揺らぎましたが、再発や後遺症を防ぐには環境を徹底的に見直す覚悟が必要でした。
帰ってきたクゥの歩く姿は腰が落ち気味で、後ろ足はまだしっかり動きません。それでも、自力で排泄できることが確認できたときには本当に安心しました。
入院中同様に最初はオムツを使っていたんですが、ダックス特有の胴長体型ではすぐにずれてしまうため、自宅ではオムツは使わず、定期的にトイレへ連れて行く方法に切り替えることにしました。

ダックスのための段差・床材対策
ダックスは体型的に小さな段差でも腰を痛めるリスクがあります。そのため、我が家では「段差をなくす」ことが最優先の課題になりました。
特にソファーは大好きな居場所でしたが、思い切って脚を外して高さを変えたことで、自力では上がれないようにしました。
最初は不満そうに見上げていましたが、数日もすれば自分のベッドで休む習慣ができて、結果的に安心できる居場所を見つけてくれたようです。
さらに階段には柵を設置しました。家族が2階へ上がると、以前は無理に追いかけようとして転びそうになったこともあります。ロック付きのゲートを取り付けたことで、留守中も安心して過ごせています。
玄関にも工夫をしました。段差解消のために木材のスロープを自作。最初は恐る恐るでしたが、今では自然に歩いて上り下りができています。
また、床材はフローリングからタイルカーペットに全面変更。滑らなくなったおかげで、退院直後のクゥが初めて安定して立ち上がった時は「大成功だ」と声をあげたほどでした。
Before(フローリング+柵なし)
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我が家はフローリングで、愛犬が歩くと足元がすべりやすく、特に術後の弱った体には大きな負担に。
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階段にも柵をしていなかったので、上り下りが自由に出来る状態でした。階段からの落下が心配な状態でした。
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術後のクゥちゃんにとって危険が多い環境で、日常生活の大きなリスクになっていた状態です。
After(タイルカーペット+柵あり)
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「ホームセンターで購入した 50㎝×50㎝ のタイルカーペットを 1 階全面に敷き詰めたことで、足腰への負担が大きく減り、安心して歩ける環境に改善しました。1 枚あたり 360 円(税込)程度と手頃で、汚れた部分だけ交換できるので清潔も保ちやすいです。滑って転ぶ心配がなくなり、クゥも落ち着いて室内を歩けるようになりました。」
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「階段の手前にはベビーゲートを設置。最初は「行きたいのに行けない」と少し不満そうでしたが、慣れてからは安全なスペースの中で落ち着いて過ごすようになりました。階段に柵を付けたことで、留守番中も安心です。」
散歩はいつから?再開の目安とスケジュール
術後しばらくは外に出るのを控え、まずは家の中で安静に過ごしました。窓際で外を見つめる姿に「歩きたいんだろうな」と感じることもありましたが、我慢が大切だと自分に言い聞かせました。
1か月後:10分程度、芝生などの柔らかい地面を選んで散歩再開
2か月後:30分前後に延長し、緩やかな坂や土の道も挑戦
3か月後:以前のような距離を歩けるように
途中で疲れて後ろ足がよたつくこともありました。そのたびに抱き上げて休ませ、呼吸が落ち着いてから再開。少し時間はかかりましたが、外の風を感じながら歩く楽しみを取り戻すことができました。
自宅でのリハビリ方法
クゥの回復を支えるために、毎日少しずつリハビリをしました。
立位練習 …お尻を支えて立たせる、地味ですがとても大切なリハビリです。最初はわずか5秒程度で崩れてしまったのが、毎日続けるうちに少しずつ変化が見えてきました。1か月後には、30秒以上しっかり立てるようになったのです。

マッサージ …夜寝る前に足をやさしくなでると、翌日は歩きが安定していました。
水中歩行 …夏にはビニールプールで足慣らし。楽しそうに尻尾を振りながら進んでいました。
おやつリハビリ …少し先におやつを置いて「ゆっくり歩いて取る」練習。遊び感覚でできたので継続できました。
飼い主の心得
同じような病気を経験した犬と比べて焦る時期もありました。「あの子はもう走っているのに、クゥはまだよろけている…」と落ち込んだこともあります。
でも、先生に「回復のスピードは犬によって違う」と言われてからは、無理に急がせないと決めました。「昨日より今日、1歩進めた」ことを喜ぶようにしたら、気持ちが楽になったのです。
今ではクゥは散歩も楽しめるようになり、生活の質も大きく改善しました。
よくある質問(Q&A)
A: 個体差がありますが、我が家のクゥちゃんは術後2か月ほどで少しずつ走れるようになりました。獣医さんの指示を守りながら、無理のない範囲で回復を待つことが大切です。
A: コルセットはずっとではなく、回復段階に応じて外せるケースが多いです。一般的には数週間~数か月で卒業する子が多いのですが、我が家はクゥがおてんばでジャンプしそうだったため、獣医師と相談して約1年近く着けていました。長めではありますが、「性格や生活環境によって必要な期間が変わる」という実例として参考になればと思います。必ず獣医師に確認しながら調整してくださいね。
A: はい。ダックスは椎間板ヘルニアが多い犬種ですが、コーギーやフレンチブルドッグなど、胴長体型の犬種も注意が必要です。フローリングや階段など、足腰に負担がかかる環境はどの犬種でもできるだけ避けたほうが安心です。
まとめ
椎間板ヘルニア手術後の生活は、飼い主にも根気が必要です。
段差をなくす工夫、散歩を少しずつ再開させる努力、自宅での簡単なリハビリ。どれも地味な積み重ねですが、確実に愛犬の笑顔につながります。
クゥが再び自分の足で歩き、散歩を楽しめるようになった姿を見て、「諦めずに一緒に頑張ってきてよかった」と心から思いました。
- 術後すぐは「安静第一」
- 段差をなくして腰の負担を減らす
- 散歩は少しずつ距離を伸ばす
- 家でもできるリハビリを取り入れる
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焦らず比べず、見守る
クゥが再び自分の足で歩き、散歩を楽しめるようになった姿を見て、「諦めずに一緒に頑張ってきてよかった」と心から思いました。
この記事が、同じように不安を抱えている飼い主さんの支えになれば幸いです。


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